媛もち麥シンジケート

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株式会社フェルマ木須 [佐賀県]

http://fermakisu.com

もち麦に対する想いをお聞かせいただけますか。

地元で、農家さんに麦の話をすると裏作(米のついで)と思われているようで、麦なんて…みたいな話です(苦笑)。こんなに良い食べ物を作らないなんてもったいない、と。私が言う農業とは二毛作農業のことで、米と麦を組み合わせた農業を指しています。また、ここ佐賀県の西南暖地の気候を生かすという意味での土地利用型農業です。その選択肢の一つに麦があれば良いと思います。これを、各々の農家が採算を合わせて、再生産可能にしていくことが未来の農業につながると思っています.

持続可能な農業のあり方を考えると採算感覚は大切ですね。ところで木須さんが“もち麦”を作り続けようというモチベーションはどこから来るものなんでしょう?

“国産の誇り”とでも言いましょうか。食に関わる者として安心・安全であることは何物にも優先すべき事案だと思っています。どこの、誰が、どのような想いで作っているのか、ここをはっきり伝えていきたいという気持ちから今回、新ブランド“媛もち麥”の生産グループに参画させていただくことになりました。安定した生産、そして食べ続けていただけることが、みんなの健康、ひいては農業の健康にもつながっていくと思うのです。

話し手:フェルマ木須 代表取締役 木須栄作

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永石農産 [佐賀県]

http://nagaishinousan.com

ここ佐賀県での大麦栽培、どのようなきっかけで始められたのですか。

ご多聞に違わず、佐賀県でも過疎化の流れは止まらず、農業においては高齢化によって耕作放棄地が多くなってきています。せっかく代々受け継いで来た畑を荒らすのはもったいないという考えで “もち麦”を植えてみようと。

憲彦さんで何代目ですか。

三代目になります。代々、米・大豆・野菜の三本柱で一年を回していましたが、ここに来て麦・雑穀が加わりました。時代のニーズにフットワーク良く応えるという、これは若さゆえの特権ですね(笑)。選択肢を多く持つ事はリスク回避にもなります。

媛もち麥シンジケートに加わったメリットはありましたか。

仲間は全国各地に広がっている、ということは、もしひとつの地域で不作だったとき他地域の生産者さんがカバーしてくれる。また「うちはこのような対策で上手く行った」とか「こんなリスクがあるよ」と仲間内で情報を共有できるのも大きな魅力です。

やり甲斐は?

例えば、自分の子供達に安心して食べさせられるものを、自分で作ることが出来るというのは有難いことだなと思うんです。媛もち麥の美味しさ、作り手が見える安心感を身の廻りの人達にコツコツ伝えて行きたいです。そして笑顔が帰って来れば、それは最高のご褒美ですね。

話し手:永石農産 三代目 永石憲彦

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有限会社国定農産 [岡山県]

https://www.hatomugi.com

国定さんと言えば“ハトムギ”で有名ですが、今回“もち麦”を作られたきっかけは何でしょう?

麦栽培では“ハトムギ”は表作、“もち麦”は裏作にあたります。畑の有効活用という面もあります。

もち麦栽培の面白みは?

美容健康に対する効能は各所で言われている通りで、お客様に良いものをお届けする、そして必ず良い反応があるのが面白みに繋がります。作る側、扱ってくださる方、使ってくださる方々にも利がある“三方よし”が理想です。それを実現できるのが“もち麦”という事でしょうか。

反響はいかがですか?

6歳になる孫がいるのですが、ある日、親に連れられて加工場にやってきて「もち麦ちょうだい!」と。なぜ?と親に聞くと以前食べていたのをこのところ中断していたのだが子供の方から「もち麦ごはんが食べたい」と言い出したので、との事。子供ながらに調子の良さを実感していたのかもしれません。

理屈ではなく本能的にカラダが欲する、というのは興味深いエピソード、100の能書きより説得力があります。

実際に食べていただいて初めて判る効能もあると思いますので、まずは最初の一口を、が今後の課題です。

話し手:国定農産 代表取締役 国定 豪

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有限会社佐藤農園 [徳島県]

http://tokukaigi.or.jp/agl/archives/168/

もち麦に出会ったきっかけは何ですか。

米作りの裏作として小麦、そこから転じてはだか麦を作っていたのですが、10年ほど前にジェイ・ウィングファームの牧さんからもち麦を紹介していただいたのが最初です。

徳島県の山間部での栽培、ご苦労も多かったのでは?

麦は湿気を嫌います。雨の多いこの地域では常に湿気との戦いでした。圃場整備を行いながら質を上げていく努力は続けなければなりません。あとは労働力の問題でしょうか。若手の参入を期待しています。

反響はいかがですか?

体調がすぐれない方が何か身体に良いものは無いかと探に探して“もち麦”にたどり着き、弊社に買い求めに来られました。以来、効能を実感されたのでしょう、今では自分で栽培を始められ結構な規模になっていると聞きました。
我々もそうですが、自分で納得したものだから長く続けられているんだと思います。

話し手:佐藤農園 代表取締役 佐藤剛明

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JA 東とくしま / 有限会社樫山農園 [徳島県]

http://www.ja-higashitks.or.jp
http://www.kashiyama-farms.com

JA東とくしま・西田さんにお伺いします。 もち麦をこの地域に広められた動機は何でしょうか。

JAの役割として、農家さんへの情報提供という重要な任を負っています。もち麦という付加価値のある作物を紹介し、植えていただいたからにはアフターフォローが大切。徳島の田畠の多くは海抜0mそこそこですので圃場整備には労力を要しますが、もち麦は商品力がある作物ですので苦労に応えてくれるのが嬉しいです。各農家さんから「おかげさまで(笑顔)」というご褒美を戴けるよう、我々は品質向上&販路拡大に力を注いで行きたいと思っています。

樫山農園・樫山さんにお伺いします。 新たにもち麦栽培を始められていかがですか?

弊社はフルーツトマト、水稲、葉もの野菜、菌床シイタケを主力としています。ほ場の管理はコンピューターで制御する“スマートアグリ”を実現、品質管理を徹底し高付加価値のものを生産しています。競合に飲み込まれると価格競争で疲弊するばかり。独自色を出さないと面白く無いですから。そこに“もち麦”が加わりました。弊社のコンセプトに合致した、すなわち“高付加価値”作物ですので今後も拡大予定です。

それだけ魅力的な作物だと。

ですね。時代が求めているものを提供し、良い反応が帰ってくる、それが私たちのモチベーションに繋がっていると感じます。

話し手:JA 東とくしま 西田 聖 / 樫山農園 樫山 直樹

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有限会社あずま産直ねっと [群馬県]

http://www.azuma-sun.co.jp/gaiyo.html

なぜもち麦を植えようと?

群馬県のこの場所は雨が少なくて乾燥している土地が多く、麦作りに適した気候風土と言えます。ジェイ・ウィングファームのある愛媛県とよく似ている環境ですので無理なく導入できました。そして、やはり高齢化の波はここでも深刻で、働き手を失った畑や田がどんどん出てきます。この傾向はますます加速化するでしょう。荒らすわけにはいかない田畠の救済策として野菜やもち麦を植えています。

周囲の方達の反応いかがですか。

もち麦の濃紫色の穂に皆さん驚かれます。散歩されている方から「これは何だ?」と。視覚的にインパクトのあるもち麦ですから、まずそこが入口となって興味を持って頂き、もち麦の存在がもっと知られるようになれば良いなと思っています。ファンを広げていくために加工食品、例えば“もち麦うどん”や“もち麦パスタ”も面白そうですし赤ちゃんの離乳食にも使えそうです。

話し手:あずま産直ネット 松村 昭寿

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有限会社フクハラファーム [滋賀県]

http://www.fukuharafarm.jp

もち麦との出会いは何だったのでしょう?

先代とジェイ・ウィングファームの牧さんとの長い付き合いの中で「もち麦を植えてみんか?」との声掛けをいただいたのが始まりでした。

見渡す限りの水田ですが…

琵琶湖東岸のこの辺りでは皆が米を作っていて“米を買う”という文化が無かったような所です。それほど米作が盛んで圃場も広い。その土地の活用策として裏作で小麦を植えていたのですが、それも減収傾向にあり次の作物を探していたところなので、もち麦との出会いは渡りに船という絶好のタイミングでした。

初めて作付けしたのが2017年。様々な条件の圃場に植えて適性を探り、本格化させたのが2018年ですからまだ2年目です。すでに手応えを感じていて、周囲の農家にも推奨していこうと。この地がもち麦の一大産地になれば面白いなと思っています。

話し手:フクハラファーム 福原 悠平

Spin Off Topic

“The穀”の商標をお持ちの茨城県/大嶋農場さん、今回ジェイ・ウィングファームの雑穀商品にその名前を使わせて頂きました。

株式会社大嶋農場 [茨城県]

http://www.hyakusyoumai.com

作っておられるお米の種類が多いですね!

現在57品種あります。理由は“お客さんの要望にお応えする”という考えから、多様化する嗜好に合わせて生産する、つまり、生産者都合で“出来上がったものを買ってください”では無く“求められるものを作る”というスタンスに切り替えたからです。いわゆるプロダクトアウトからマーケットインへの転換です。

ちなみに本多さん、1ヵ月30日×3食= 90回の食事のうち、お米を食べる割合はどのくらいですか?

1日1食あるか無いか… 朝はパンだし昼は麺類が多いですね。かろうじて夕食にご飯が登場する程度かな?

全食事の内、半数にも満たない米飯を“主食”と呼べるか、というハナシですよ(苦笑)。
お米はもはや“嗜好品”になってるのではないでしょうか。だから十人十色の好みがあり、それに合わせて様々な選択肢を用意させていただくという生産スタイルもあっていいんじゃないかと思っています。美味しいお米と言っても、美味しさの感じ方は人それぞれだし、料理の種類によっても変わってきます。個々のお好みを丁寧にヒアリングして最適解を提案させていただく、そんな“お米ソムリエ”みたいな存在が理想でしょうかねぇ。

話し手:大嶋農場 大嶋 康司

[取材後記]
農業にも人工知能(AI)がやって来ました。上手く使えば無駄なく、効率的に物事を進める事ができるでしょう。しかし、為すがままに事を運べば、日本全国“均質化”した工業製品のようなものが出来てしまわないか少し心配です。
人は、迷っては間違い、あえて困難な道を選んだりするし無駄が多く矛盾だらけで本能的・直感的に動き予測できないような事を仕出かします。そして失敗や苦労を笑い飛ばす… なんて魅力的なんでしょう。今回の取材で出会った人は、そんな“人間味”に溢れる人たちでした。人間っぽい揺らぐ心からとんでもなく面白いものが生まれて来るし、地域によって、作る人によって違ったものが出来上がる…地域産品の生命線はそのような多様性(選択肢の提示)にあるのではないか、と感じた取材紀行でした。

御来屋デザイン事務所 / aula brand design ブランディングディレクター 本多 英二